賃貸借契約|なぜトラブルは起きるのか?原因と対策

通常お部屋を借りる時に必ずと言っていいほど、賃貸借契約を交わします。

この賃貸借契約は、借りる側と貸す側双方の合意で成立するもので、トラブルを防止するためにもとても重要なものです。

しかし、この契約をめぐるトラブルが非常に多いことも事実なのです。

 

賃貸住宅に関する相談件数

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
38,148件 36,455件 33,620件 33,298件 33,234件

※PIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)資料参照

 

では、なぜトラブルが起きるのでしょうか?

一言で申し上げれば、借りる側が契約内容を十分に理解していないからです。

とは言っても専門家でない限り、この内容全てを理解することはとても大変です。

一方、国土交通省では、平成5年1月に賃貸住宅標準契約書を作成し、平成24年2月に改訂し、平成29年6月にはさらに改訂を検討しており、規定が随時更新されていきます。

このように、不動産業を管轄する国土交通省としてもトラブルを防止するため、地方公共団体や関係業界に注意を促してるのですが、貸す側が根本的なトラブルの原因を作っている場合があります。

貸す側は、借りる側に対し分かりやすく説明し、なおかつ、契約条件等は合法的である必要がありますが、そうでないケースがあるのもまた事実なのです。

トラブルが起きる原因は、貸す側にも借りる側にもあるようです。

未然にこれらを防ぐためには、契約をする相手を知る事・契約で注意するポイントを知る事 この2つが重要となります。

そこでまず不動産業について整理してみます。

不動産業とは

通常お部屋を借りる場合、不動産会社を通じて契約をすることが多いと思います。

不動産業を大きく分けると、建物の売買を中心とした不動産取引業・建物の管理を中心とする管理業と、賃貸の仲介を中心とする賃貸業といった形態に分かれ、売買・仲介・管理・賃貸等さまざまな業種があります。

その中で、賃貸借の仲介等を行うものを宅地建物取引業(宅建業)といい、宅地建物取引業法(宅建業法)という法律によって規制されます。

しかし建物そのものの所有者が貸借をする場合は、宅建業に含まれず、規制の対象外となっています。

この場合、仲介業者となる不動産会社は宅建業となり法規制を受けますが、建物そのものの所有者と直接契約する場合は規制の対象外です。

したがって、法的な規制があるかないかの違いを理解しておくことも大切です。

では貸す側、不動産会社が受けている法的規制とはどのようなものなのでしょうか?

宅地建物取引業の法的規制

宅建業法の主だった目的を、賃貸借契約において言えば、お部屋を借りる側は専門的な知識が乏しいと考えられるため、借りる側にとって不利にならないよう利益の保護を図り、取引の公正を確保するために規制する事です。

そのため賃貸借契約を行う場合、重要事項説明という重要な業務は、宅地建物取引士(平成27年4月1日より前は宅地建物取引責任者)という有資格者でなくてはならないと定められています。

この重要事項説明とは大きく分けて、対象物件に関する事項と、取引条件に関する事項となります。

しかし、この説明を行う宅地建物取引士となる有資格者は、第三者ではなく不動産会社の社員や経営者です。

この有資格者は本来、取引の公正を確保し利益の保護を図るため重要事項説明を行う義務が課せられるわけですが、その契約書に書かれた条件が本当の意味で正当性があるものかまでは説明してくれません。

また、建物そのものの所有者と契約を行う場合は、この重要事項説明の義務はないものとされています。

したがって契約条件は貸す側の意向によるものがほとんどなのです。

冒頭で申し上げたように、賃貸借契約は借りる側と貸す側双方の合意で成立するもので、基本的には契約自由の原則に基づいて、契約条件等は話し合いによって決めてよいものです。

このことを知らず、言われるがまま契約を交わしていることが多いため、聞いた・聞いていない等といったトラブルも発生しているようです。

では次に、契約で注意するポイントを整理していきます。

取引条件に関する注意点

1.契約期間および更新

一般的な賃貸借契約では、契約期間を二年としているところが多いようです。

この契約期間満了によって契約は終了することになるのですが、借りている側や貸主側から一定期間内に解約等の通知をしない限り、同一条件で更新するというものがあります。

このときの注意点が更新料等の有無です。

契約書の更新という項目とは別に、重要事項説明書に更新料について記載されているケースがあります。

この場合、注意が必要です。

また、更新料そのものの意味を確認しておく必要があります。

更新についてのトラブルが多いことも現実です。(契約期間と更新 参照)

2.契約期間中の修繕

入居者の故意・過失による修繕は、当然ながら入居者負担となりますが、これとは別に、自己負担修繕という項目があります。

ここのチェックも必要です。納得できるものかを確認してください。

特に、残置物(前の入居者が置いていったもの。照明・コンロ・エアコン等)がある場合の修理や取り替え等の確認も必要です。

3.契約の解除

お部屋を借りている側が通常通り家賃を支払い、善良な管理者としての義務(善管注意義務)を果たし、使用目的(用法遵守義務)に違反しないで禁止行為を守っていれば、貸主(大家)側から正当な事由がない限り一方的な解約・解除はされません。
民法や借地借家法という法律で借りている側は保護されています。

借りている側にも当然ながら権利があります。(権利と義務 参照)

4.解約

借りている側が中途解約を行う場合、いつまでに申し入れをし、いつまで家賃が必要となるかを確認しておきます。

また、違約金の有無もチェックが必要です。

5.明け渡し時(退去時)の原状回復

この項目がとても重要で、トラブルが一番多く発生しています。

お部屋を借りている者は原状回復義務があります。

そのためこの項目では、ほとんどが特約等として、別に定めをしています。

ここをしっかり理解して分からない内容は十分に理解できるよう、大家さんや管理会社に確認することが大切です。

6.敷金

敷金が不要な物件もあるようですが、前述の明け渡し時、原状回復は必要な条件であるため特約等の項目は特に注意しておきましょう。

また敷金を預けている場合も、原状回復に関する項目や特約の内容を十分に理解しておき、疑問に思うことは必ず確認してください。

退去時のトラブルはこの敷金精算によるものがほとんどです。(原状回復義務 参照)

7.その他

付保義務として、火災保険の加入を契約条件としているものもあります。(ほとんどの契約では加入が必要とされています。)

これは貸主(大家)側に対し、賠償責任が発生した場合に必要となるものであるとともに、もらい火等(失火責任法)によって自分の部屋が被害を受けた場合に対応できるものでもあるため、加入しておくことは必要なことです。

そのため、更新を忘れないようにしておきましょう。(保険の見直し 参照)
また、ペット飼育等の条件も確認が必要です。

以上、おおまかに注意が必要なポイントを整理してみました。

契約内容・条件はそれぞれの物件により違いがあります。

このような契約内容や条件そのものを理解することは難しいかもしれませんが、この契約書に書かれた意味を理解していなければ結果として契約書を盾に、契約書にサイン(署名・捺印)しているからということで不当な請求を受けないとは限りません。

だからこそ、しっかりとした認識が必要となってくるわけです。

ここで最後にもう一度整理します。

賃貸借契約におけるトラブルを防止するには

1. 契約期間・更新・解約・違約金の取り決めを理解しておくこと。

2. 修理に関する取り決めを理解しておくこと。

3. 原状回復の取り決めを理解しておくこと。
必要以上の負担が課せられていないかを確認する。

以上がとても重要なポイントです。

特に、更新時期が来たり退去を考えたりする時には事前に契約書を読み返してください。

契約内容や条件に疑問を感じたり、わからないことがあれば管理会社や大家さんに相談しましょう。

お部屋を借りている側が一方的に不利な条件で誤認するような内容は、消費者契約法という法律で無効とされます。

相談している時に、理解が得られない回答や一方的な話になるようであれば、穏やかな口調で「この契約条件は合法的な内容ですか?私は誤認していたようですが」とやさしく問いかけてみてください。

さて、どのような返事が来るのでしょう…

トラブルは避けたいものです。