お部屋を借りた場合、賃貸入居者はいくつかの義務を守らなくてはいけません。
その代表的な義務が善管注意義務「善良なる管理者の注意義務」です。
これは、借りた物件を引き渡すまで自分の財産と同じように注意をもって保管しなくてはいけないということです。
このような義務は民法によって、社会のルールや秩序を守るために定められているものです。
そもそも善管注意義務とは、一般的に要求される程度の注意を義務付けるものとされていますが、賃貸物件にはいろいろな条件があり、それぞれの契約内容によって注意事項が違ってきます。
この注意義務に違反した場合、大家さんに対する賠償責任が問われる可能性があるため、特に注意が必要となります。
そのため、賠償責任を避ける意味でも契約内容をしっかり理解しておくことがとても大切です。
ここでは一般的に考えられる注意事項を整理してみます。
日常のお手入れ
普段通りに生活していても、チリやホコリ、体毛等少しずつ部屋は汚れてきます。この掃除方法は人それぞれで、毎日する人や2~3日に一回、また一週間に一回と違いがあるはずですが、これはこれで問題はないのです。
しかし全く掃除をしないまま部屋を使用することが問題となってきます。
特に注意が必要なのは、ガスコンロや換気扇まわりの油汚れや、台所・風呂・トイレ・洗面台などの水廻りの水垢・カビ・サビ等です。
これを放置しておくと必ず原状回復の責任を問われ、トラブルの原因になりかねません。
原状回復とは、お部屋を借りた人の義務の一つで、簡単に言うと退去する時に元に戻すということです。
従って、日常の手入れはいつまでにどの程度といった決まりはありませんが、定期的に行うことは心がけてください。
しかしながら掃除が苦手でできない方もいます。そういう方はまず、余計な物は買わない、また余計な物は捨てる、そして置き場を決めて使ったら必ず決めた場所に戻し、汚さないようにする、ということを習慣づけることが大切です。
とは言っても、やはりできない方もいます。そうなれば人に頼むしかありません。
これは良い悪いではなく、自分が不得意で苦手であれば人に頼むことも一つの方法で、そのお返しとしてお礼をすればよいことです。
このお礼の仕方も決まりはありません。自分の身内や知り合いに頼めば特に問題はないと思いますが、業者に依頼すればクリーニング費用が発生することは覚悟しておきましょう。
趣味等、うっかり行ってしまう行為
自分の趣味で絵を飾ったりポスターを貼ったり、照明を付けたりすることがあると思います。
これはこれで快適な生活を送るために人それぞれの価値観で違いがあります。
ただし、自分勝手な部屋の使い方や取り付け方は問題となります。
契約内容や条件により違いがありますが、自分の趣味だと言って壁に直接絵を描いて良いものではありませんし、重量のあるものをぶら下げたり固定するために釘やネジで壁や天井・床等に穴を開けて良いものではありません。
釘やネジによる壁穴等の傷は原状回復の時に問題となります。
重量物等を固定する場合は大家さんや管理会社に相談してみることや、取り外した後のことを考えて対策をしておくことが懸命です。
また、タバコのヤニや臭いがしみついた場合も問題となります。
この他にも、結露を放置したことにより発生したシミやカビも責任を問われることになります。
このようなことを知らずにお部屋を使用していれば、退去時に思わぬ請求が来ないとは限りません。備え付けの設備の取扱いにも注意が必要です。
冒頭に申し上げたように、善良な管理者の注意義務とは自分の財産と同じように大切に保管することですので、一般的な常識のもと決められたルールに従ってその部屋や建物を使用しなくてはいけません。
このように借りている側には善管注意義務があるわけですが、日常的な手入れや注意事項を守っていても問題が発生する場合があります。
建物の構造上発生する結露問題
建物の構造には、木造や、鉄筋コンクリート造・軽量鉄骨造等があり、建物の断熱性や気密性等に関係するものです。
特に鉄筋コンクリート造等の建物は気密性が高いため、結露が発生しやすいと言われています。
そのため借りている側の手入れによって解決できないものもあるため、問題を解決するためには大家さんや管理会社に相談する必要がでてきます。
先に申し上げたように一般的な常識というものは範囲も広く一言で言えるものではありませんが、このようなことを知らずに自分自身で対処していても結果的に責任を問われてしまえば身もフタもありません。
問題や疑問がある場合はまずは大家さんや管理会社に相談することが大切です。
貸している大家さん側にも修繕義務がありますので、善良なる管理者として連絡し対処してもらうことも必要となります。
この場合、大家さんや管理会社の対応にも違いが出てくるため、もし改善できない場合は自己負担での修理が必要でないことを書面でもらっておきましょう。
善良な管理者として賠償責任を避けるには
誰しも悪意をもってお部屋を借りているわけではないはずです。
しかし掃除が苦手な方や趣味が多い方、またきれい好きな方等、人それぞれです。
誰が良い悪いではなくお部屋を借りている以上、契約上の注意事項や一般的な常識を守ることが大切です。
借りた部屋は、退去する時には元に戻さなくてはいけません。
その時にトラブルは避けたいものです。
お部屋は限られたスペースしかないため、特に注意しておきたいことをまとめます。
○ 余計な物は買わない・余計な物は捨てる・汚さない
○ 自分の趣味でお部屋に物を置いたり飾ったりしても、度を越さないように管理し、取り去った後のことを考えて対策をする
○ 建物の構造上に問題があると考えられる原因は大家さんや管理会社に相談する
また、奇声を発するなどの騒音に関することや、ゴミ出しのルール等も一般的な注意義務として守るべきことです。
賃貸入居者が善良な管理者であり、故意過失がなければ賠償責任を問われることはありません。
大家さんや管理会社の方、また他の住民が必ずしも良い方ばかりとは限りませんので、賠償責任を問われないようまずは基本的なことを理解しておきましょう。
(関連記事:原状回復義務)