お部屋を借り賃貸生活を送っているうえで、思わぬトラブルはつきものです。
ついうっかり手がすべって化粧瓶を落とし、洗面台を破損させてしまった。このような偶然な事故は起きないとは限りません。
当然ながら大家さんに対する賠償責任が発生します。
さてこれは保険でカバーできるのでしょうか?
「できます」と申し上げたいのですが、保険会社には様々な条件が付いています。
したがって、その補償内容をしっかり理解しておかなくてはいけません。
賃貸入居者は、一般的な損害保険会社か少額短期保険会社のどちらかで保険契約をしていると思われます。
この保険契約は、入居時の賃貸契約を行う時に不動産会社から勧められたものではないでしょうか。
保険に加入する最大の理由は、火災等の事故の時に大家さんに対する損害賠償責任を負う可能性があるからです。
もちろんご自分の家財に損害があった場合のことも考えておかなければいけませんが、お部屋を借りた人には原状回復義務があります。
そのため保険に加入しているのです。
そこでここでは少額短期保険会社に加入されている方に、その特徴や大家さんに対する損害賠償責任が発生した場合の補償について整理してみます。
少額短期保険会社について
保険業法の改正に伴い、2006年4月から生命保険会社・損害保険会社に続く、第三の保険会社として誕生しています。
この保険会社の取り扱う商品は様々で、医療に関するものや生命、ペット、介護等いくつかの種目があります。
賃貸入居者用の保険は、損害保険となる火災保険の家財と賠償責任に関したものになっています。
この保険はその名の通り短期で少額なもので、支払われる保険金にも制限があり、保険期間は2年の範囲内と決められているため、1年契約または2年契約で更新が必要となってきます。
賃貸用の少額短期保険会社の共通している内容はご自分の家財に対する補償と大家さんや他人に対する賠償責任の補償、また修理費用等に対する補償です。
この中の賠償責任の補償は1000万円が上限とされています。(特例を受けている会社は2018年3月末まで上限3000万円)
したがって理解しておかなければいけないことはその補償される範囲です。
そこで次に補償範囲を整理します。
補償範囲について
この範囲は、先に申し上げたご自分の家財に対するものと、大家さんや他人に対するもの、また修理費等に関するものです。
まず、家財について整理します。
家財補償とは
一般的に言われる家財となるものが下記のものです。
・家具類…机・テーブル・椅子・ベッド・たんす等
・家電類…テレビ・冷蔵庫・電子レンジ・掃除機等
・衣類…洋服・バッグ・靴等
・電子通信機器類…パソコン・携帯電話・カメラ等
これらの家財が火災や自然災害また盗難等によって損害を受けた場合に設定した保険金が支払われるものです。
自然災害・盗難等とは、落雷・風災・ひょう災・雪災・建物外部からの飛来・落下・衝突・倒壊・騒じょう、また給排水設置に関する水濡れ事故のことです。
保険会社によっては、この災害等の範囲を限定しているものもありますが、不測かつ突発的な事故(偶然な事故)を補償しているものもあります。
家財補償の不測かつ突発的な事故(偶然な事故)とは、例えば部屋で荷物を移動中に誤ってテレビにぶつかりテレビを壊したとします。
このような時の補償が、突発的(偶然)な事故となるものです。
ただし、高額なテレビであったとしても補償される金額に上限があるものです。
また、宝石や貴金属、骨董品等にも制限があることが一般的で、免責(自己負担額)がつくものもあります。
ここで注意が必要なことは、テレビ等を誤って壊した時のはずみで壁に穴をあけてしまった場合です。
これは家財の補償とは別です。
このことを、まずは基本的な家財の補償と理解しておく必要があります。
そこで次に賠償責任について整理します。
賠償責任補償とは
第三者に対し、法律上の賠償責任が発生した場合に補償されるものです。
例えば、自分の借りている部屋で水漏れを起こし、下の部屋の方に損害を与えたとします。
この時に、下の部屋の方に対し損害賠償責任が発生し、これを補償するものが個人賠償責任補償となります。
また、この水漏れが原因で自分の部屋が水濡れして床の修復が必要となった場合に、大家さんに対する損害賠償責任となり、借家人賠償責任補償となるわけです。
ただ注意が必要なことは、保険会社によりこの補償している範囲を限定しているものがあります。
借家人賠償に関する項目で、火災・破裂・爆発の時と限定している場合です。
この場合、水漏れによる損害は借家人賠償責任補償は適用されません。
したがってこの範囲を確認しておく必要があります。
またこの借家人賠償責任に関する中に、偶然な事故にも適用されるものもあります。
これは先に申し上げた、荷物の移動中等で壁に穴をあけた時等のことです。
このような時にも補償されるものがあるということです。
思わぬトラブルが起きないとは限りません。
そんな時に保険でカバーできるものかを確認しておくことです。
次に修理費用に関することを整理します。
修理費用補償とは
この補償は自分の借りている部屋に損害が発生し、緊急的に復旧するため自費で修理した費用に対するものです。
具体的には、空き巣に入られドアの鍵が壊された場合の修理費用や凍結を解氷するために支払った金額、また窓ガラスが熱割れした場合に補償するものが一般的です。
この他に洗面台や浴槽・便器の破損にも対応しているものもあります。
ただし、免責(自己負担額)や保証される金額の上限があるものです。
またこれら以外の偶然な事故にも適用されるものもあります。
このようなことが基本的な補償となるもので、各保険会社によりその範囲に違いがあります。
ご自分の加入している保険が、家財の補償とは別にどの範囲まで補償されているのかを理解しておくことはとても大切です。
思わぬ事故は起きないことに越したことはありません。
しかし、トラブルは起きないとは限らないのです。
保険は掛け捨ての意味合いが強いものですが、保険料を支払っている以上その内容をしっかり理解しておくべきです。
冒頭に申し上げたように、賃貸入居者が保険に加入している理由は、賠償責任を考えなければいけないからです。
保険は火災の時の補償と考えがちですが、それだけではないものです。
ご自分の加入している保険に偶然の事故による補償が付いていることを知らない方がいます。
そこで最後にこの補償が借家人賠償責任補償に含まれている少額短期保険会社を紹介しておきます。
偶然な事故の補償
少額短期保険協会に所属している会社のうち、下記の会社では借家人賠償責任の補償範囲に偶然な事故(不測かつ突発的な事故)を含めていますので(2017年12月現在)、下記会社に保険加入されている方は契約内容をよく確認しておきましょう。
また、下記以外で契約されている方もこの機会に契約内容をよく理解しておくことをお勧めします。
●e-Net少額短期保険 賃貸住宅保障総合保険 新バリュープラン
●あそしあ少額短期保険 新家財総合保険 わが家の保険(借家人賠償責任担保拡張特約)
●イオン少額短期保険 イオンの家財保険 賃貸プランWide
●イズミ少額短期保険 賃貸入居者総合保険
●エタニティ少額短期保険・全管協共済会 あんしん保険プラスⅢスーパー 入居者総合あんしん保険プラスⅢ
●エポス少額短期保険 あんしん家財保険 ROOM GUARD Be
●少額短期保険ハウスガード 賃貸入居者向け総合保険 新リバップガード
●セーフティージャパン・リスクマネジメント 賃貸くらし安心保険
●ネットライフ火災少額短期保険 入居者総合保険
●東日本少額短期保険 賃貸住宅プラン
※上記会社の中には一部条件付きになっていることもあります。
まとめ
賃貸住宅用の保険を取り扱う少額短期保険会社の保険料は、家財の補償を300~400万円に設定している場合、2年契約で15,000~20,000円の保険料としているものが多いようです。
この保険料が高いか安いかというのではなく、その補償範囲を理解しておくことが大切だということです。
もちろん、家財の補償を大きくすれば保険料は高くなります。
しかし、家財以外の補償を理解していなければ、保険が活用できるにもかかわらず自費で対応することになってしまいます。
偶然壁に穴をあけた場合に保険でカバーできたとしても、保険会社や不動産会社の方がわざわざ保険の活用を勧めてくれるものではありません。
お部屋を借りている方は原状回復義務があります。
不注意による事故は誰にでも起き得ることです。
その時には早目の対応が必要です。退去のときでは遅いのです。
まずはこのことを基本的なこととして理解してください。
現在ご加入の保険、どこまで補償されていますか?
契約内容をよく理解しておきましょう。