入居時に賃貸契約を結ぶ際、ほとんどの場合で加入しなければならない火災保険。
その保険の内容をどれほど理解しているでしょうか。
不動産屋さんからすすめられたままになっていませんか?
万が一の時、また思いがけないときにも補償されるものが保険です。その内容を正しく理解していなければ、ただ単に掛け捨てとなってしまいます。
なぜ保険に加入しているのか?その意味を知り、必要な補償内容を理解しておくことはとても大切です。
正しく保険を活用するためにも、現在ご加入の保険を見直してください。
今回は、賃貸入居者が保険に加入する理由を含め、保険会社を選ぶ時の基本的な知識と見直しのポイントについてまとめていきます。
賃貸入居者が火災(家財)保険に加入する理由
一言で申し上げれば、原状回復義務があるからです。
自己所有の持ち家であればこのような義務はありませんが、賃貸住宅となれば大家さんに対する賠償責任が発生することがあります。
万が一火災を起こしてしまえばその賠償額が大きくなる可能性があるため、必ずと言っていいほど保険に加入させられるのです。
消防庁の統計を見れば、建物火災の原因は、コンロ・タバコ・放火というものが毎年のように上位を占めています。
自分はタバコを吸わないし、コンロもほとんど使わないといっても、放火となれば話が違います。
日本には失火責任法という法律があり、自分が起こした火災が原因で隣家に被害を与えたとしても、重大な過失がない限り、隣家に対する責任は問わないものとされています。
逆に言えば、自分が火元ではないのに隣の部屋からのもらい火で自分の部屋に被害があった場合、自己責任で修理が必要となるわけです。
なんとも理不尽な話のようですが、このような法律があることも知っておいてください。
このようなことから、思いがけないトラブルが起きないとは限りません。
そのためにも保険に加入しておくことは大切なことなのです。
しかし保険料は安く抑えたいというのが心情ですよね。
そのためには、賃貸用の保険の補償内容をまずは理解しておくことです。
入居者が必要な保険の補償とは
日本国内において、賃貸住宅に関する損害保険を取り扱う会社や団体は日本損害保険協会に登録されている会社で13社、日本少額短期保険協会登録では39社、共済団体大手で4団体等、たくさんの会社や団体があります。
(参照:賃貸用損害保険会社 2017年(H29)12月現在)
各社・各団体ともそれぞれの商品で、いくつもの補償を組み合わせて取扱いをしているため、どこがよいのかは一言では言えません。
ここでは、賃貸用の保険を取り扱う各社・各団体で共通する部分の基本的なことを整理してみます。
まず、火災保険は建物と家財に分けて保険金額が設定されます。
建物については、物件所有者である大家さんが加入するものです。
したがって賃貸契約者は、家財について加入することになります。
そのため各社・各団体それぞれにマイルーム保険・家財の保険・入居者の保険等として商品を案内しているわけです。
ここで共通する補償は、火災や自然災害(風災・ひょう災・雪災等)によって被害を受けた自己所有の家財に対し補償されるものと、大家さんに対して賠償責任が発生した場合の借家人賠償責任保険となります。
そもそも家財は入居者ご自分の財産を守るための補償です。
冒頭で申し上げたように、賃貸契約者は原状回復義務があるため、大家さんに対する補償を考えなくてはいけません。
それを補償するものが借家人賠償責任保険となるのです。
また他人に対して与えた被害を補償するものが、個人賠償責任保険というものです。
この他にそれぞれの保険会社や団体がいろいろな修理費用等の補修を付けて差別化を図っています。
そのため、補償される内容もそれぞれに違いがあるのです。
この補償内容がとても重要になってきます。
しかし、この補償内容を見極めることはなかなか大変です。
そこでまず、民間の保険会社と共済団体のおおまかな違いを整理してみます。
損害保険会社・少額短期保険会社・共済団体の違い
一般的な損害保険会社の案内する商品は、プランも豊富で選択肢に幅があり、比較的自由に設定が可能です。
少額短期保険会社は、2006年4月の保険業法の改正に伴い誕生した会社で、補償金額と契約期間が規制されています。
そのため、補償する損害保険の金額は1千万円までとなっているので、補償内容はそれぞれ限定的なものとして、保険料を比較的安く設定しています。
(2006年4月以前の保険業法の適用を受けていない共済から、少額短期保険会社に移行した団体については特例措置として2018年3月までは上限が3千万円とされています。)
双方とも、金融庁のもと、保険業法により規制を受けます。
ただし、少額短期保険会社は会社が破綻した場合の契約者保護機構はありません。
そのため、開業時には供託金制度があり、また保険会社の保険として再保険を行っている会社があります。
共済団体は、協同組合が行う保障事業で、組合員の出資によって運営されています。
民間事業と違って営利を目的とせず、組合員一人ひとりの助け合いで補償制度が成り立っています。
そのため、補償内容を限定し保険料となる掛金も少なく設定しており、組合員になれば共済に加入することができます。
また、共済団体は農業協同組合法(JA共済)、消費生活協同組合法(全労災・都道府県民共済・コープ共済)によって規定され、農林水産省や厚生労働省の監督・許可を受け事業を行っていますが、契約者(共済者)に対する保護機構はありません。
民間会社では、保険・保険料・保険金等と呼びますが、共済団体では、共済・掛金・共済金等と呼んでいます。
以上がおおまかな違いです。
このようなおおまかな違いをまずは理解したうえで、それぞれが取り扱う補償の金額を知らなければいけません。
では、保険料(掛金)や保険金(共済金)がどのように設定されているかを次に整理してみます。
保険料(掛金)・保険金(共済金)の設定の仕組み
一般的な損害保険会社の場合
家財保障の基本として、火災を含め自然災害(風災・ひょう災・雪災等)をベースに、その他の費用補償や借家人賠償責任、個人賠償責任等を基本補償としたり、またオプション(付けたり、付けなかったり)として選択します。
また、免責(自己負担額)を付けることで保険料を安くするものもあります。
例えば、免責額を5万円として選択した場合、仮に100万円の被害があっても5万円は自己負担するということで、95万円が保険金として支払われます。
逆に言えば5万円の被害であれば保険金は支払いされないということです。
次に構造級別といって、木造であればH構造、鉄筋造であればT構造、コンクリート造であればM構造として保険料に差がつきます。
これは建物そのものの構造が燃えやすいか、燃えにくいかの違いと考えればよいわけで、当然ながら木造のほうが燃えやすいため、保険料も割高になります。
この確認方法は、お部屋を借りたときの賃貸契約書の最初のページに構造という表記で記載されていますので確認できます。
このようなことを選択して家族構成や年齢によって一つの目安となる家財評価額で保険金(補償される金額)と保険料(契約者が支払う料金)を決めていきます。
下記表が一般的に使われる家財評価額の目安です。
家財評価額 (保険金額・単位/万円)
単身 | 夫婦2人 | 夫婦2人 子供1人 |
夫婦2人 子供2人 |
|
25歳以下 | 300 | 500 | 600 | 700 |
26~32歳 | 300 | 700 | 800 | 900 |
33~37歳 | 300 | 1,000 | 1,100 | 1,200 |
38~42歳 | 300 | 1,200 | 1,300 | 1,400 |
43~47歳 | 300 | 1,400 | 1,500 | 1,600 |
48歳以上 | 300 | 1,500 | 1,600 | 1,700 |
年齢の幅や家族構成また金額は各保険会社によって異なります。
あくまでも参考までに記入した数字です。
また、各保険会社それぞれに評価額の違いはありますが、必ずしもその目安で設定しなくてもよいものです。ただし、最低金額の基準はあるようです。
この目安によって設定した保険金額で先に申し上げたプランにより保険料が決定します。
整理すると、基本プランをどうするか?→オプション等を付けるか?→免責を付けるか?
→建物の構造は何か?→保険金額をどのくらいにするか?→保険料決定
これが一般的な流れです。この他に地震保険の選択もあります。
少額短期保険を取り扱っている会社の場合
少額短期保険会社は、家財の補償と大家さんや他人に対する賠償責任に対する補償、また修理費用等に対する補償をセットで取り扱っています。
そのため、家族構成によって家財の保険金を決めて保険料の設定をするものと、家財の保険金のプランによって保険料を設定するものに分かれています。
家族構成によるものは、一般的な損害保険会社の場合で紹介した家財評価額を目安とするものです。
家財の保険金のプランによるものは、保険金が300万円、400万円、500万円等と設定し、それぞれにより保険料が決まるものです。
賠償責任となる補償は、借家人賠償責任と個人賠償責任合わせて1千万円が原則です。(特例を受けている会社は3千万円まで)
また修理費用等の補償は、各社それぞれ特徴を持たせています。
これらを含めたものが保険料として設定されます。
したがって、賠償責任の補償金額や修理費用等の補償金額を基本的には選択できません。しかし、中にはオプションとして特約を付けることのできるものもあります。
共済団体の場合
共済団体は一般的な保険会社と違い一口いくらといった口数によって補償内容が違ってきます。
一口当たりの掛金は安く設定されていますが補償を大きくすればその掛金となる口数を増やさなければいけません。
また、補償内容を自由に選択することはできません。
以上のことが保険金(共済金)や保険料(掛金)を設定する仕組みとなります。
通常お部屋を借りる場合、不動産屋さんを通して賃貸借の契約を行い、その時に保険をすすめられ加入することになると思います。
この場合、不動産会社からは共済団体の取り扱う保険をすすめられることはほとんどありません。
なぜならば共済団体は代理店制度ではないからです。
一般的な損害保険会社や少額短期保険会社は代理店制度をとっていることが多く、不動産会社がその代理店になっていることが多いのです。
ただ賃貸用の保険といっても、たくさんの会社や団体が取り扱っているということも知っておいてください。
そこで、現在加入していると思われる一般的な損害保険会社と少額短期保険会社の補償内容を見直す時のポイントを整理してみます。
補償内容を見直すポイント
一般的な損害保険会社にご加入の場合
・基本プランを変更できないか?
・家財の補償額が必要以上ではないか?
・オプションは必要か?
この点を見直すだけでも保険料が下がる場合があります。
少額短期保険会社にご加入の場合
・借家人賠償責任の内容がどの程度の範囲で補償されているか?
この点がとても重要です。
ただ保険料を安くするということではなく、この補償内容をよく理解しておいてください。(少額短期保険:参照)
賃貸における保険加入の意味は原状回復義務があるからということです。
冒頭に申し上げたように、失火責任法という法律があるため、たとえ自分に責任がなくても隣からのもらい火等は、自己責任で修理が必要となることがあります。
こんな時にも対応できるものが借家人賠償責任保険です。
もちろん自分の不注意によって起こした事故にも対応できるものです。
ただ、この補償だけに加入することができないため、家財保険の基本補償やオプションとしてセットすることになるわけです。
(火災保険は建物と家財に分けて設定するものとなっています。)
したがって保険の見直しを考える場合、家財の補償金額をどのくらいにするか?その他の補償をどう考えるかが基本的なポイントです。
家財の補償・高い金額にする必要ありますか?
・家財の補償は自分や家族の家財に対するもの
・借家人賠償責任は大家さんに対して考える補償
・個人賠償責任は他人に対して考える補償
このことを理解し、なぜ保険に加入しているのかの意味を知り、見直せるものは見直してください。
自分のためか、大家さんや他人に対して考えるのか?このことがとても重要です。
現在ご加入の保険、不動産屋さんからすすめられたままのものになっていませんか?
保険はいつでも切り替えできます。
まずはご加入の保険内容をよく確認してみて下さい。