突然ですが日常のお部屋のお手入れ、どの程度の期間で行っていますか?
これは人それぞれで構わないことですが、全く掃除をせず汚したままの状態では問題です。
借りた部屋は退去する時に元に戻さなくてはいけません。
シミ・カビ・サビ跡等、故意過失責任が問われます。
では、きれいに使っていた場合はどうなのでしょうか?
当然責任を問われることはありません。
しかし、ついうっかり壁や床等を傷つけてしまうことがあります。
例えばコートを掛けるため、ネジ等で壁に穴をあけたとします。
この場合、どこまで故意過失責任が問われ、どの範囲まで元に戻せばよいのでしょう。
原状回復責任が問われる場合、お部屋を借りている側は部分的な補修で済ませたいと考えます。しかし、大家さん側は全面的に張替えを考えることがあります。
ここにギャップがあり、トラブルの原因となりかねないのです。
そのため賃貸契約書にも原状回復に関する項目や、修理に関する内容が記載されています。
しかし借りる側の修理負担等が一方的に不利な条件となっていれば注意が必要です。
このようなことがないように、国土交通省ではトラブルを防止する意味でガイドラインを公表しています。
したがって、契約内容やガイドラインの内容を理解しておくことが必要です。
ここでは、基本的に入居者が故意過失責任が問われる要件とその範囲を整理していきます。
故意過失が問われる要件
入居者の手入れ不足や不注意によるもの、使用方法を間違ったもの、また意図的に行ったものが責任を問われるもので下記内容です。
手入れ不足と考えられるもの
1.カーペットに飲み物等をこぼしたことによるシミ・カビ等
2.冷蔵庫下のサビ跡
3.台所・ガスコンロ置き場・換気扇等の油汚れ
4.風呂・トイレ・洗面台の水垢・カビ等
不注意によるものと考えられるもの
1.引っ越し作業で生じたキズ
2.雨などが吹き込んだことなどを放置して畳やフローリングが色落ちしたもの
3.結露を放置したことにより拡大したシミ・カビ
4.クーラーから水漏れしたものを放置した壁の腐食
5.鍵の紛失・破損 等
部屋の使用方法を間違ったと考えられるもの
1.重量物等を掛けるためにあけた壁等のクギ穴・ネジ穴(下地ボードの張り替えが必要なもの)
2.天井に直接付けた照明器具の跡
意図的に行ったと考えられるもの
1.落書き
2.タバコのヤニ・臭い
3.不適切な使用による設備の毀損
その他
1.ペットによるキズ・臭い
2.不適切な日常の手入れ
このようなものが基本的に故意過失責任が問われるものです。
この他にも契約書に禁止事項等があればその内容によります。
次に、修理が必要となる単位や範囲を整理します。
各部屋ごとの単位・範囲
1.床:畳の場合 原則1枚単位、キズ等を付けた枚数
2.床:カーペット・クッションフロアの場合 キズ等の程度により一部屋単位
3.床:フローリングの場合 原則1㎡単位、キズ等の程度により一部屋単位
4.壁・天井(クロス)の場合 原則1㎡単位、もしくはその面一面分まで
5.タバコの臭い・ヤニ等の場合 居室全体のクリーニングまたは張り替え
6.建具・柱の場合 襖・柱は原則一本単位での補修
7.設備機器の場合 補修部分または交換
8.鍵の場合 補修部分、紛失の場合はシリンダー交換含
これらが基本的な単位や範囲となります。
また先ほど、故意過失責任の要件に壁等のクギ穴・ネジ穴に触れましたが、画びょうとの違いを簡単に説明しておきます。
壁・天井・下地ボードについて
壁や天井には一般的に壁紙(クロス)が貼られています。
この壁紙を貼る下地となるのが下地ボードと呼ばれ、石膏ボードを意味するものです。
クロスを破った場合と穴をあけた場合では修理範囲が違ってきます。
画びょうの場合は針も短く小さいため、補修の責任は問われないものとされています。
しかし、度が過ぎると問題となることもあります。
クギやネジ等の場合は比較的穴が大きくなり、下地ボードを突き抜けている場合があります。
そのため下地ボードの補修が必要となることがあるわけです。
この下地ボードは、防火性や遮音性があり重要なものでもあります。
したがって、故意過失責任が問われることがあるのです。
またこれとは別に、床材のクッションフロアとフローリングも修理範囲が違ってきます。
たまにクッションフロアをフローリングと勘違いしている方もいますので、これらの床材の違いを次に整理しておきます。
床材の違いについて
床材には基本的に、クッションフロア(CF)・フローリング・カーペットに分けられています。
クッションフロアとは
ビニール製のクッション性のあるシート状の床材をクッションフロアと呼びます。
これは、防水性・クッション性に優れていますがキズの修復が難しくへこみが簡単に付き、経過年数により剥れ等の劣化が起きることがあります。
フローリングとは
天然材の無垢(むく)フローリングと板を重ねて作られる合板製フローリングがあり、賃貸のアパート・マンションでは一般的に合板製フローリングが使用されています。
この合板製フローリングの下に遮音性マットを貼っていることが多いものです。
これは、耐傷性・断熱性がありますが材質が比較的硬く足ざわりが冷たく感じるものです。
カーペットとは
これは基本的に絨毯のことで、毛足があるものです。しかしタイルカーペット等もあり毛足を感じないものもあります。
吸音効果や保温効果のあるものですが、摩擦により表面が劣化していきます。
これらを見分ける場合は、カーペットはすぐにわかると思いますが、クッションフロアの場合は種類が多くフローリングに似た木目調のものがあり、フローリングと勘違いしている場合があります。
フローリングの場合は材質が硬く、クッションフロアはクッション性があるので指で軽く押してみてヘコミや弾力性があればクッションフロアです。
この他に長尺シートというものがありますが、これはクッションフロアのクッション性がないもので表面が硬いものです。
一般的には店舗等の土足で対応できるものとして使用されるものです。
まずはこのような違いを基本的なこととして認識しておいてください。
ここで次に入居者の義務について簡単に説明しておきます。
義務とは
お部屋を借りた場合、入居者には善良な管理者としての注意義務や用法に従う義務、また原状回復義務があります。
お部屋をきれいに使用していてもついうっかり壁や床等を傷つけることがあります。
このような時に原状回復義務が発生し、故意過失責任が問われるのです。
しかし、基本的なことを理解しておけばトラブルは避けられます。
原状回復が必要となった場合でも、建物や設備等の経過年数や耐用年数を考慮することとされています。
これは、建物等の価値は年数が経過すると減少していくため、原状回復を行う場合その減少した価値を考慮し新品と同様に入居者に負担させないという考えです。
例えば借りた部屋の床がクッションフロアで入居当時新品で価値が100%であっても年数の経過により価値は減少していくため、クッションフロアの場合6年経過するとその価値は1円となる考え方です。
このように普通に生活していても建物や設備等の価値は減少していき、自然と起きる日焼けの跡や家具を置いた後のくぼみ等は通常損耗と考え、故意過失の責任は問わないとしています。
したがって原状回復の義務はないということです。
(この内容は別記事に紹介していますので参考にしてください。賃貸入居者の割合負担とは:参照)
ここでは、入居者の故意過失責任に関することやその範囲について基本的なことを説明させて頂きました。
そこで最後に、このことについてまとめます。
まとめ
入居者が故意過失責任を問われるもの。
1.手入れ不足による汚れ、シミ・カビ・サビ跡等
2.不注意によるキズ・結露等の放置、また鍵等備品の紛失
3.使用方法を間違った設置方法や取扱い
4.意図的に行ったもの、落書きやキズ、またタバコの臭い・ヤニ等
5.ペットによるキズ等
6.その他通常の使用を超える損耗及び間違った機器の使用
これらが故意過失責任が問われる主だった内容です。
この他にも冒頭で申し上げたように、契約書に禁止事項等があればその内容によります。
不注意により壁や床等傷付けてしまうことは誰にでも起き得ることです。
そのような時の基本的なことを理解しておきましょう。
(関連記事:賃貸入居者の負担割合とは)