お部屋を借りた入居者は契約によって定められた使用方法を守らなくてはいけません。
これを用法遵守義務(ようほうじゅんしゅぎむ)といい、簡単に言うと禁止事項を守るということになります。
そもそも用法遵守義務とは民法による規定ですが、賃貸物件にはそれぞれの性質により定められる契約内容が違っています。
したがって間違った使用をしていれば、大家さんに対する賠償責任や契約解除となる可能性があるため注意が必要です。
例えば、賃貸契約上居住目的としてお部屋を借りているにもかかわらず、事務所として使用する等が用法遵守義務違反となります。
またペット不可の条件でペットを飼うことも違反です。
このような行為を行うと周りの住人に対する迷惑行為として指摘を受け、改善されない場合は契約解除になりかねません。
この他には、自分の趣味でポスター等を壁や天井に数多く貼り付けてしまうようなことです。
自分の趣味なので他人に迷惑をかけていないといっても、退去時には元に戻さなくてはいけません。原状回復義務があります。
この時に大家さんに対する賠償責任が問われることになるのです。
日常生活を送るうえでカレンダーやポスター、また絵を飾ることがあります。
これは特に問題はないのですが、度が過ぎてしまえば問題です。
ポスター等を剥がした後の壁紙の色の違いや数多くの画びょうの跡、またテープ跡が問題となり、退去時には思いもよらない請求が来ないとは限りません。
契約時の使用目的が居住用であれば、このような使用をしていると鑑賞目的として使用したと指摘を受ける可能性があり、賠償責任が問われることがあるのです。
このようなつい行ってしまう行為や間違った使用をしないためにも、契約内容をしっかり理解しておくことが大切です。
ここでは、一般的に居住目的とした場合の禁止事項等を整理してみます。
禁止事項及び契約条件等
賃貸契約書には契約条件・禁止事項・承諾通知事項・注意事項等が記載され、各物件ごとにそれぞれ規定があります。
その中で用法遵守義務に関する一般的な項目が下記内容です。
契約条件
● 反社会勢力の排除
● 借りている部屋の譲渡・転貸の禁止
● 増築・改築・改造・模様替え及び工作物の設置の禁止
● ペットの飼育規約 等
これらの条件が基本的な項目として記載されています。
禁止事項
● 危険な物品の製造・保管(銃・刀・爆発物・薬品等)
● 重量物の搬入・備え付け(大型金庫・ピアノ等)
● 大音量での機器の使用・騒音
● 他住民への迷惑行為
● 反社会的勢力の出入り 等
承諾行為及び通知行為
● 階段・廊下等の共用部分使用方法
● 契約時の同居人以外の新たな入居者の連絡
● 一定期間不在時の連絡 等
注意事項
● ゴミ出しルール
● 適切な清掃及び換気
● 物件周辺の無断駐車 等
このような条件・内容が、借りた部屋を使用するうえで用法を守るべき主だった内容となっています。
注意点
ここで、特に注意をしておきたいことが迷惑行為となるものです。
仮にペット可の契約条件であっても、糞尿の処理や躾といったことは飼い主として適切に対処する必要があります。
特にアパート・マンションのような賃貸住宅では、自分が借りている部屋以外にも他の入居者が生活をしています。
これらの人たちが皆自分勝手な使用方法で、他人に迷惑をかけてよいものではありません。
ペットの糞尿処理をせず放置したままで発生する異臭や、ゴミを出さないまま発生した臭い等も迷惑行為として義務違反をとわれることになります。
同じく、テレビやラジオ等の大音量や奇声、あるいはドタバタと走り回る足音等も騒音問題として迷惑行為となります。
この他にも廊下や階段等の共用部分に物を置いてよいものでもありません。
自分の部屋以外の共用部分を使用する場合は、必ず大家さんや管理会社の許可を得ることが必要です。
このように他人に迷惑をかけないよう契約内容を守り、その建物の性質によって定められたルールに従い、許可が必要な場合は承認を得ることが大切なことです。
また冒頭に申し上げたように、他人に迷惑をかけない状態でお部屋を使用している場合があります。
自分の趣味等によるお部屋の使用です。
ポスターを貼ったり植物を置くような行為等は特に禁止されているものではないはずですが、度が過ぎれば問題です。
したがって、対策はしっかり考えておきましょう。
この他の注意点が設備等の使用方法です。
通常、備え付けの設備の故障は大家さん側の責任として修理や交換をするものですが、間違った使用方法が原因となれば自己負担での修理・交換が必要となってきます。
賠償責任を問われないためにも大切に取り扱うことを心掛けて下さい。
最後に、用法遵守義務違反にる契約解除に関することをまとめます。
契約解除について
用法遵守義務違反が原因で契約を解除される場合は、指摘を受けているにもかかわらず改善することなく使用を続けることです。
したがって、貸主との信頼関係の破壊による場合となります。
改善され、信頼関係が保てれば契約解除にはなりません。
(契約解除となる要因)
・借りている部屋を他人に無断で使用させたり、譲渡するような背信的行為
・家賃の不払いを継続的に行う行為
・用法義務違反を改善しない行為
このような行為が契約を解除される要因となります。
お部屋を借りた場合いくつかの義務がありますが、家賃を支払って借りている以上その部屋を使用収益する権利があります。
使用収益とは、借りている部屋を使用して利益を得てもよいということです。
ただし、上述のような使用目的や禁止事項を守らなければ問題となってきます。
賃貸契約の条件等は物件ごとに違っているため、契約書に記載された内容を今一度見直しておくことが必要です。
まずはこのようなことを理解し、トラブルにならないよう注意しておきましょう。
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